インタビュー/カンボジアで「農業革命」を



<ロングインタビュー>

野菜のサブスクリプションを初めて運用開始

カンボジアで「農業革命」を



Yamato Green Co., Ltd.共同代表

鍋島克仁さん

Nabeshima Katsuhito



■カンボジア初の販売方式


――カンボジアでは初めてとなる野菜のサブスクリプション「ザ・フレッシュ」を今年、開始されました。定額で定期的に野菜が配達される販売方式ですが、どんな目的で立ち上げたのか、お聞かせください。


 ザ・フレッシュは、野菜の生産から出口(販売)までを私たちが一括管理します。自社農園や契約農家が生産する安全、安心の有機無農薬野菜を食べていただき、家族みんなが笑顔で健康に生活できることを目指しています。私たちのサブスクリプションの特徴の一つは、管理栄養士により算出された毎日の生活に必要なバランスのとれた栄養を満たすべく、適正な種類と量の野菜や果物の詰め合わせをご自宅へお届けすることです。野菜や果物は旬のもので、それらを食べていただくことで皆様に健康的な生活をいつまでも続けいただくことが目的です。

 カンボジアは農業大国、といわれます。しかし、その現状は未だ悲惨なものです。カンボジアの野菜自給率は非常に低く、自国生産している野菜も主に空心菜や香草類、チンゲン菜などです。その他の多くは隣国から輸入されています。土地の多くは粘土質で水はけが悪い。雨季の長雨で土地が水没してしまう。これでは、米や果物は作れますが、野菜が作れません。

 土壌改良についての技術や知識がなく、質の高い農作物を作れないうえ、米、野菜、果物といった多角的な農業経営で年間を通して安定した収入を得ることもできない。農家が貧困に陥る悪循環ができていました。いくつも農家を回って調査しましたが、自分の作りたいものを作れるだけ作って売る、というスタイルで、計画性がなく、市場ニーズを無視した農業がほとんどでした。


 そもそも野菜は気温が30度以上になると育ちにくくなります。暑さのために自らの水分を使うため、成長点が止まってしまうからです。カンボジアの野菜の多くがベトナムから輸入されていることはよく知られていますが、ベトナムやタイは、標高1500メートル以上、平均気温23度ぐらいの地域で野菜を作れるので輸出できる量の生産ができるのです。

 カンボジアはそれに比べて平坦な国ですが、それでもボコール山やモンドルキリ州など、いくつか野菜作りが可能な気候の場所はあります。ただ、これらの地域で野菜を作れるようにするには、土壌の改良や、高機能グリーンハウスの導入など農業の近代化、灌漑システムの整備、さらには大消費地までのインフラ整備による流通コストの低減、野菜の鮮度維持のための保冷トラック輸送や保冷倉庫の完備などコールドチェーン物流の整備といった全体的な「農業改革」が必要になってきます。容易ではありませんが、そうした根本的な取り組みをしなければ、この国の農業は変わらないということが、分かりました。

 私たちが立ち上げたザ・フレッシュの取り組みには、野菜の配達を通してカンボジアの皆さんの健康向上のみならず、生産から流通まで、カンボジアの農業の仕組み全体を改革したい、という大きな目標があるのです。

 農家が安定生産できる仕組みを作り、農業をもうかる職業にする、若者にとっても「メードインカンボジア」の野菜を世界に誇れるようなかっこいい職業にしたい。そのために、種苗、農業機材から輸送・流通、販売に至るまで、日本のトップクラスの企業とコンソーシアムを結成し、日系企業のサポートでカンボジアに新しい農業のビジネスモデルをつくっているところです。このような仕組みにカンボジア政府も賛同いただき、農林水産省を始め、観光省、商業省、経済財政省など様々な分野からの協力もいただいています。



■「食べて健康に」を目指す


――ザ・フレッシュは今年6月に試験販売を開始しましたが、実際にはどんな反応がありましたか。


 カンボジアの皆さんの健康や食の安全に対する意識がとても高いことがわかりました。新型コロナの影響もあり、これからは健康維持や免疫力をつけることに、より高い関心が集まると思います。

 カンボジアは目まぐるしい経済発展の中で、人々の生活も変わってきています。「食」に対する考え方も変化していて、健康に対する意識が非常に高まってきています。健康は、お金では買えない。毎日の食事がカギになる。そんなことを人々はより考えていくようになると思います。皆様にこれから一番お伝えしたいことは、「どれだけ長く生きられるか」ではなく「どれだけ健康に生きられるか」ということです。「安全」であることも大事ですが、カンボジアの人たちの意識はもっと進んでいて、「健康になれる食品」を求めています。

健康や美容にいいもの、それを言い換えると「生命エネルギーのある食品」ということになります。安全であることだけでは、もはや付加価値にはなりません。その食品が、どのように身体にいいのか、そこまで意識される社会になってきています。

 生命力という付加価値の高い農作物を生み出していくことが、「もうかる農業」にもつながると思います。私たちも、野菜の生産・販売にとどまらず、セミナーや勉強会で食や健康に関する知識を広め、食育、健康増進、あるいは未病といった分野に取り組む「健康ビジネス」に発展させたいと思っています。また、ディベロッパーとコラボレーションして「健康住宅」の開発にも取り組んでいます。これは、特に衛生環境や健康増進を重視して開発された新興住宅街に、ファームや活動拠点を作り、安心安全な食品を定期的にお届けし、セミナーなどで健康に関して学んでもらおうという取り組みです。


■「もうかる」農業に


――ザ・フレッシュの取り組みは、生産から流通まで一括管理してフードバリューチェーンを作るというお話がありました。鍋島さんご自身は、どのような状況から、農業改革をしたいと思われたのでしょうか。


 私は、この国の農業や社会の実情を知るにつれ、「この国を変えるために自分に何ができるのか」を真面目に考えるようになりました。たとえば農家の人たちは読み書きができない人が多い。貧困層が多く、教育も十分ではない。一方で、情報だけは都市部から農村部にも流れ込み、バイクやスマートフォンなど「欲しいもの」はどんどん増えていく。そこへ金を借りる仕組みが浸透し、弱い者はさらに弱くなっていく。農業を捨てて、都市部や外国へ出稼ぎに行く人も増えてしまう。この悪循環を変えなくては、農業は廃れ、都市部と農村部の人々の富の格差は広がるばかりです。

 私は、農家の自立こそが必要なことだと思っています。農業を「もうかる仕事」にしなくてはならない。若い世代にとって魅力的な職業にしなくてはならないと思っています。農業は、ある意味、個人事業主または社長なのです。安定生産ができるように市場原理を理解し、経営戦略を持ち、技術改革をしながら事業に臨まなくてはならない。まだこの国の農家にそういう発想をもっている人は少ないと思います。作りやすいもの、売れやすいものを作り、薄利多売でしのいでいるに過ぎない。

 タイやベトナムは、「もうかる仕事」にしなくては農業を維持できないと分かっていて、政府の補助金制度があります。作ったものを販売するための流通ルートや市場も確立されてきています。でもカンボジアには、まだ十分な農業への補助金制度もなく、流通や市場も確立されていない。農作物が、タイやベトナムに非正規ルートで持ち出されてしまうこともまだ続いています。

 カンボジアは現在も発展途上にあり、貧困問題、乳幼児死亡率の高さ、平均寿命の短さ等、未だ大きな社会問題です。「生命エネルギーの源」と言われる野菜の摂取量も少なく、市場に出回る野菜も農薬が多量に使われている物、暑さや保存方法の悪さで萎びた野菜が多く並びます。私達は生産技術の改革と同時に、生命維持にとって不可欠な野菜の重要性を伝え、国民の意識改革も進めていきたいと思っています。

 カンボジアは、人、物、土地、全てにおいて今後も大きく飛躍する可能性を秘めています。新型コロナの影響で、観光業、縫製業始め、カンボジア経済が今大きな打撃を受けていますが、そんな中、今後はますます農業が経済を建て直し、国民を救う鍵となる事は間違いないでしょう。

 「日本」の洗練されたノウハウが、この国で「農業革命」をもたらし、カンボジアがさらなる発展へと繋がることを信じ、今後も邁進して参ります。


有機野菜のサブスクリプションについてお問い合わせはこちらへ。


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