Gateau de Gourmet~思い出に捧げるお菓子 シモキタシマイ
■Strawberry Fields Never
お菓子は英語で“sweets”という。だけど、お菓子は甘いだけでなく、時に酸っぱく、時にほろ苦く、まるでわたしたちの思い出のようだ。思い出を甘いものにするか、そうじゃないのかは自分次第だが、わたしはそんな思い出を演出できる、心の通ったお菓子で未来を紡いでいきたい。初回は、甘酸っぱいストロベリータルトのおはなし。

日本に行ったことのあるカンボジアの友人は、日本の果物、特に苺のかぐわしさ、瑞々しさに痛く感動したという。カンボジアは、熱帯気候ゆえ残念ながら苺の栽培に不向きな土地であり、国内に販売されている苺の多くは欧米からの輸入品である。粒もそろっておらず、なんだかドス黒い。そして、何より訳7USD/1パックとお高い。こう3拍子そろってしまうとなかなか手にしにくいのだが、今回は蛍光色で書かれた”50%オフ”の値引き表示に釣られて思わず購入してしまった。
カンボジアに苺農園ができることは過去にも未来にも到底あり得ないだろうが、せめてタルトの上に、存在するはずのない苺を植え付けてみよう。The Beatles はいう。”Nothing is real. ” Then, everything is fiction…?
高価な生苺の一方、冷凍系果物は破格だ。日本の販売額のおよそ半額で購入できる。これもカンボジアと欧州間で締結されている特恵関税のおかげか。タルトの一層目とトッピングの苺のつや足しには、冷凍ラズベリーと、程よい甘さのカンボジアンパームシュガーで煮詰めたジャムを使用してみた。苺とたっぷりの生クリームは、永遠に続く最強の乙女フレーバーだ。(月刊「プノン」2018年10月号に掲載)
中村 典 NAKAMURA Nori
高校・大学時代より母のもとで料理や製菓のレッスンを受ける。大学院卒業後、IT企業に勤務したのち、国際協力分野の専門家として政府機関に勤務。8年間に渡り海外(中国・ドイツ・アメリカ・カンボジア)に在住。カンボジアにて洋菓子作り・洋菓子の講師・雑誌連載など、製菓関連の仕事にも従事する。2020年〜、東京・下北沢のカフェ「シモキタシマイ」オーナーを務める。

シモキタシマイ
ホームページ(オンラインショップ):shimokitashimai
住所:〒155-0032 東京都世田谷区代沢4-15-2
メール:sister.norimana@gmail.com