異文化理解のきっかけ「カルチャーマップ」 <日本語の教室から>


異文化理解のきっかけ「カルチャーマップ」


 日本語教育の現場は国際交流の現場でもあります。ですので、それに従事する私たち日本語教師には高い異文化理解力が求められます。


 「異文化理解」の指し示す範囲は非常に広いものですが、ここ数年私が注目しているのが「カルチャーマップ」という概念です。これは『異文化理解力』という本の中で提唱されているもので、8つの指標(「コミュニケーション」「評価」「説得」「リード」「決断」「信頼」「見解の相違」「スケジューリング」)について世界中の文化を比較・相対化し、それらを数直線上に表わそうというものです。「文化の見取り図」とでも訳せるでしょうか。


 この説明ではわかりにくいので、例として指標の一つである「コミュニケーション」について見てみましょう(図1‐1:エリン・メイヤー(2015)p13)。コミュニケーションの仕方には二つのタイプがあります。それは「ローコンテクスト」「ハイコンテクスト」というものです。「ローコンテクスト文化」は「厳密」「シンプル」「明確」を良しとするコミュニケーション文化です。メッセージを額面通りに伝え、額面通りに受け取ります。一方「ハイコンテクスト文化」は「含み」があるとか、「多層的」「行間で伝える」などを良しとします。ほのめかしなども多用され、はっきりと断言することは少なくなります。

 図を見れば分かるように(見なくてもわかりますが)、日本はハイコンテクスト文化に属しま す。ちょっと前に流行った「KY」などという言葉も日本のハイコンテクストぶりをよく表していると言えます。


 では、日本以外の国ではみんなローコンテクストなコミュニケーションを良しとするのでしょうか。…そんなことはありませんね。図のように、ローコンテクスト文化の国の代表としてはアメリカやカナダ、オーストラリアなどが上げられていますが、日本をはじめとしたアジアの国々はほとんどハイコンテクスト文化と認定されています(もちろん相対的な差異はあります)。このようなことを知識として持っていれば、出身国別に学習者への対応を変えることを検討したりもできます。


 よく「日本人はイエスノーをはっきり言わない。外国に出たら自分の態度をはっきりと表明にしないと生き残れない」などと言われてきましたが、ここで言う「外国」とは極めて狭い地域を指していることがわかります。世界は「日本」と「外国」で分けられるほど単純な成り立ちをしていないということです。


 このように異文化理解に役立つカルチャーマップですが、人の考え方や行動の背景には文化的影響だけでは説明できない個人差もあります。ですから、「●●人にはこういう対応をすればよい」などと人々を出身国別に分けて、杓子定規的な対応をするのは問題です。


 カルチャーマップは異文化理解へのきっかけに過ぎません。各指標と真摯に向き合うことによって「相手の文化的背景に配慮する」のが一番で、最終的には「さまざまな文化的背景を持った一人一人の個性に配慮をする」ということにつながらないといけません。


 学校であれ、会社であれ、国際交流の現場で何かうまくいかないことがあるとすれば、それは彼我の文化的背景への理解の欠如があるのかもしれません。それを考えるきっかけとしては「カルチャーマップ」は非常に有用な概念だと思います。


 ちなみにこの本の中では日本についての言及は少なくないのですが、カンボジアについてはほとんど触れられていません。本を読みながら、各指標について「カンボジアはどのあたりに位置するのだろうか?」と考えていくのも、きっとおもしろくて意義深い、知的作業になることでしょう。



参考・引用:エリン・メイヤー(2015)『異文化理解力』英知出版


<筆者紹介>

佐久間司郎(さくま しろう)

国際交流基金派遣日本語専門家(CJCC) 2019年3月より現職。神戸市出身。






raffles logo.jpg

​プノンペンの物件探しはお任せください。

カンボジアでの銀行手続きをすべて日本語でサポート

​詳しくはバナーをクリックして要項をご覧ください!

​ジャパンデスクまでお気軽にお尋ねください。

​新モデルルームをオープン!バナークリックで詳細を

​日本人常駐。信頼と実績の専門医。

​海外旅行保険対応(キャッシュレス)

ビジネスのトータルサポート