オノコミ流 ちょっと道案内①
第1回 「大学生の娘が起業する、と言い出しました」
いつの世も、仕事や人生の悩みの種は尽きないもの。働くこと、人付き合い、自分探し……。様々な「お悩み」について、企業風土の育成に取り組んでいる小野田コミュニケーションデザイン事務所(オノコミ、横浜市)の梶原温美さんに、ご自身の歩み、経験を踏まえてちょっと道案内をしていただきます。(プノンネット編集部)
Q 大学2年生の娘が、卒業後は就職せず、起業したいと言い始めました。大学の授業でキャリアプラニングをする課題があり、自分なりに考えたようです。でも親としては、「まず就職して社会を知ってからでも」と思ってしまいます。娘の自立心は尊重したいけれど、心配でたまりません。

A. 私にも同じ年頃の娘がいるので、このお悩みはとても人ごとではありません。つい先日、うちの娘は大学の寮を出て一人暮らしをする住まいを探していました。親の懐事情を子供なりに気遣い、一人で見つけてきた物件。それは西向き2階建て築20年超のアパートの1階でした。地方ののどかな町とはいえ、さすがに心穏やかではありませんでした。その後、紆余曲折の後、別の物件を見つけて一件落着。心底ホッとしました。
さて、大学生ともなると、自分で考えて行動することが、頼もしくもあるのですが、親目線でみると、まだまだ危なっかしいところがあるのも正直なところですね。そして、その危うさは、多くの場合、「知らない」ことから来るものの様に思います。
どうやら娘さんたちの世代は、私たち親世代が生まれ育った時代とはまったく別の時代を歩いて(走って?)いくことになりそうです。
その理由を、人口推移を例にお話してみますね。
日本の人口は2008年の1億2,808万人をピークに減少フェーズに入りました。ここ2、3年に限っていうと、年間約50万人という急激なペースで減り続けています。ちなみに栃木県宇都宮市や愛媛県松山市の人口が50万人ほどです。ちょっと極端な想像ですが、毎年このくらいの規模の市から人が一人もいなくなることを想像すると、まるでSF映画を観ている様な感覚になります。
このような状況では、労働力も消費力も「数」という視点でいえば、減っていく一方なんです。加えて、様々な領域の技術革新で世界との距離はどんどん近くなっています。だから、時代の変化を読みながら会社自体も変わっていくことができないと、労働力も消費力も増加していた時代には「とても安定」していた会社が、「不安定」な会社になってしまったり、会社自体が消えていったりすることだってあり得るのが、これからの時代なんだと思います。
さて、ここで、文頭でご紹介した起業を望む女子学生の娘さんの話に戻りましょう。
彼女はなぜ、起業したいと思っているのでしょうか。
実現したいと強く思うビジネスアイデアがあるのでしょうか。
独立起業して人生を楽しんでいるように見える憧れの先輩や知人がいるのでしょうか。
会社という箱を想像すると窮屈に感じ、もっと自分らしく自由に生きたい、と思っているのでしょうか。
あるいは、社会の理不尽さや不都合を正したいという正義感が起業への思いを強くさせているのでしょうか。
もし、まだこのような話を娘さんに聞いていなかったら、「親」という立場をいったん横において、「どうして起業したいと考えているのか」について、まっさらな気持ちで聞いてみることから始めてみませんか。
時代の変化が目まぐるしい中、私たち親世代の常識に当てはめた「安定した企業への就職の勧め」や「幸せな結婚」などの具体的なアドバイスは、残念ながら、もうなんの役にも立たないと思います。
一方で、それよりも本質的なこと(「人はなぜ働くのか」、「自分らしい働き方とは」など)については、親は変わらずに信頼できる人生の先輩でいられるように思いますし、そうありたいと思います。そのために、私たち自身も、世の中で昔から変わらないことと、時代と共に変わっていくことの両方にまだまだ「知らない」ことがたくさんあることを自覚して、謙虚に学び続け、自分に磨きをかけていきたいですね。
それでも、親という肩書きをいつも背負って頑張り続けるのは、疲れますよ。だから何も気にせず、ただひたすらに愛情を注ぎたいときには、犬や猫という「別の子供」をターゲットにしましょう。彼ら彼女らは、注いだ愛情を倍返ししてくれますから、安心して無限に可愛がることができます。そうこうしているうちに、「孫」という最強のターゲットが現れるかもしれませんね。
そんな日を楽しみに待っていましょう。

梶原温美 Kajihara Harumi
1987年より2016年までメーカー(日系・外資系)、コンサルティングファーム、ベンチャー企業で主に人事職として働く。2016年より株式会社小野田コミュニケーションデザイン事務所に加入、同時期に、障がい者雇用を企業側から支援する事業を開始。キャリアコンサルタント資格保有。横浜在住歴20年超。「横浜は古さと新さの両方が違和感なく共存しているところが好き。現職の事業でカンボジアをたびたび訪れて大好きになりました!」

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