神田陽悟さん「大メコン圏を俯瞰、カンボジアは新たな発展ステージへ」(三菱商事プノンペン駐在事務所長)



――カンボジアに着任されて間もなく4年ということですが、現在、御社のカンボジアでの事業展開について教えてください。


 はい。事業会社経由で、三菱電機エレベーター・エスカレーターの販売・据付・保守事業や、いすゞ製ピックアップ車(D-MAX)他の販売に加え、現地代理店経由で、食品や化学品素材などの輸入販売を行っております。

 政府開発援助(ODA)関連では、プノンペン都向けにいすゞ製バス車両80台の提供、信号機や交通管制センターといった交通関連整備事業、カンポットの浄水場整備など水事業といったことにも取り組んできました。


――カンボジアでは新型コロナの本格的な市中感染は2021年初めからでしたが、事業への影響はどのようなものでしたか。


 一部では欧州市場が閉まるなどグローバル経済の影響を受けました。カンボジアの国内でも、例えばエレベーター・エスカレーター事業は、建設プロジェクトそのものが中断したりして、影響を受けました。一方で、海外への渡航制限により国内需要が高まるといった状況もありました。全体的にいえば、政変で混乱したミャンマーなどと比べ、カンボジアは政情が安定していたこともあり、感染者が急増した21年前半は苦しかったものの、後半以降はまだら模様ではありますが、全体的には回復基調になっています。

 世界ではオミクロン株による感染拡大も続いており、今後の経済活動の行方は、「新型コロナ次第」という状況は2022年も続きそうです。。

 とはいえ、じっとしているつもりはありません。カンボジアでエネルギー分野やDX活用ビジネスなどの新しい事業を立ち上げたいと取り組んでいます。長期的にみれば、カンボジアの主要産業である農業や観光業、不動産業といった分野でもさまざまな困難はありますが、貢献をしたいと考えています。


――カンボジアはASEANの中でも人口1600万人の比較的小さな国です。経済人として、カンボジアをどのような位置づけで見ていらっしゃいますか。


 カンボジアは、大メコン圏の中心、プノンペンはそのへそにあたります。ASEANの後発参加国はCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)と呼ばれますが、その中でもカンボジアは地政学的にも恵まれた立地にあると思います。タイとベトナムに挟まれているという地の利が、東西あるいは南部に走る経済回廊により活かされ、地域間のコネクテイビティが年々深まっています。すでに「チャイナプラスワン」以外に、「タイプラスワン」「ベトナムプラスワン」といった言葉がある通り、経済的な面で「次の投資先」としての注目度は非常に高いと認識しています。

 政治・社会的な面でいえば、先ほども申し上げましたが、近隣のミャンマーや、反政府デモが頻発するタイなどに比べ、安定しています。また、2023年に東南アジア競技大会(SEA GAME)を初めて主催することから、プノンペン新空港、競技スタジアムなどインフラの整備が加速しています。1991年の内戦終結以降、カンボジアは復興の時期を終えて経済発展の時代へと移っていましたが、さらに次の発展のステージへと成長を続けていると感じます。


各国商工会のリーダーたちと。カンボジア政府との話し合いでは歩調を合わせて臨むことも。


――新たな成長期にある、という認識ですね。そんな中でカンボジアは2022年、ASEANの議長国です。2023年には国民議会選挙も迎えますが、長期にわたり政権を担うフン・セン首相のリーダーシップをどうご覧になりますか。


 今回の議長国としての役割には、フン・セン首相の強い意欲を感じます。就任前の2021年末から既にミャンマー問題で存在感を示すなど、2022年を見据えた外交的な動きをしています。今回は指導力を発揮し、ASEANを再び一つにまとめ、しっかりと引っ張っていきたい、という思いが伝わってきます。

 2021年11月にカンボジアで開催された欧州アジア会議(ASEM)でも、非常に念入りな準備が行われていました。自分たちが表舞台で役割を果たせることを世界に示す重要な機会だと捉えていたと思います。

 フン・セン首相自身には私も何度かお目にかかりました。お話を伺うと、非常に細かいところまでしっかりと指摘される方で、妥協を許さないエネルギー、何かを極めようする強い意志を感じる方です。ASEANきっての親中派と言われますが、ご自身のお子さんは5人とも米国で勉強をさせていて米国も大事に考えている。混乱の時代を生き抜いてきた指導者の、独特のバランス感覚というものを感じます。昨年末には選挙を通しての後継指名、という発言もありました。首相にとってASEAN議長国として東南アジアの存在感を国際社会に示すことは、政治家としてのひとつの集大成と考えているかもしれません。


――神田さんは、フン・セン首相のような政府幹部だけでなく、民間企業の若手経済人たちとも接する機会があると思います。カンボジアの次世代、どのようにご覧になりますか。


 私は2018年4月にカンボジアに着任しましたが、カンボジアの若い人たちの活躍が増えてきたな、という変化を感じます。経済でも政治でも非常に優秀な方々にお目にかかる機会が増え、世代交代も起きています。先日、カンボジア日本人商工会(JBAC)の活動で、カンボジアのヤングアントレプレナー(若手起業家)協会主催のパネルディスカッションに出演しました。とても積極的に活動されており、勢いや実行力があると感じました。しっかりとしたビジョンや考え方を持つ次世代を担う人たちとは、一緒に事業に取り組んでいきたいと考えています。


野球を通しての国際交流。カンボジアナショナルチームとの交流試合では1勝1敗。



――神田さんは、カンボジア日本人商工会(JBAC)の会長を2期務め、新型コロナ対策でも在留日系企業や邦人のために尽力されました。コロナ禍はまだ続いていますが、ここまでのカンボジア政府のコロナ対策はどのようにご覧になりますか。


 カンボジアの新型コロナ感染拡大は、実質、2021年2月20日の市中感染発生から深刻な事態となりました。ただ、他国の様子と比べて、感染拡大についても比較的抑制されていたということはいえると思います。

 担当が保健省なのか労働省なのかといった縦割り問題や、トップダウンによるショートノーティスの行動制限発令など混乱もありましたが、とにかく決断が速いこと、そして効果がなかったら即座に変更するというリーダーシップ。このあたりはフン・セン政権ならではの指導力を感じるものがありました。

 ワクチン接種については、JBACや日本人会の交渉の末、在留邦人に対して日本から寄贈されたアストラゼネカを使用することを認めるなど、柔軟な姿勢があり感謝しています。


カンボジアと日本の政官民が投資や貿易の諸問題について話し合う「官民合同会議」。JBACの代表として1年間の議論の成果である政策提言書を手交。



――JBACの会長として、カンボジアにおける日系企業の2022年の活動についてはどのように展望されますか。


 JBACの会員数は新型コロナの影響もあり、250社程度まで落ち込んでいましたが、現在少しずつ盛り返しています。会員数の減少は底を打ったとみています。カンボジアは比較的コロナ禍からの立ち上がりが早いのが特徴ですね。もちろん業界によってコロナの影響には差がありますが、感染抑制さえできれば、2022年は、前年よりも良い年になるという期待は高まっています。

 国際的な経済環境でいえば、「地域的な包括的経済連携協定(RCEP)」が2022年1月1日に発効したことが注目されます。「RCEPにより世界のGDPの30%を占める広域経済圏が実現した」、とよく言われますが、経済ルールが参加国内で共通化され、水平展開など新しいビジネスの可能性が広がります。カンボジアがこの新たな構造の中で、どう自らを位置付けていくのかということを見極めながら、日系企業が進出しやすい環境づくりをJBACとして取り組んでいきたいと考えています。


家族でカンボジア国内を旅行。広がる田園風景に映えるサトウヤシはカンボジアの農村のシンボル。

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